『ボキャビルマラソンMUST』

実は普段からなにかと英語の勉強してます。というのも、ネットの技術ってほとんどが海外発で、もちろん資料も英語なので、読めた方がスキルアップに繋がると思ったから。で、今までいくつかの教材を試してきたのですが、本日、ALCアルク)の『ボキャビルマラソンMUST』の受講が終了したので感想を書いてみます。

この教材は、どこかの大学の竹蓋(たけふた)さんという教授が考えた「竹蓋Vメソッド」というのを取り入れたもので、普通の学習だと語彙定着率が2週間後には10%に落ちてしまうところを、11週間後でも93%の定着率にしてしまうという夢のようなメソッド。

1日30分×週5日×6カ月のカリキュラムで、1ユニット(1週間分)の具体的な流れはこの様になっています。なお、チャンクとは単文のことです。

  • [day1] 筆記練習→単語テスト→チャンク記憶→チャンク穴埋め→単語テスト
  • [day2] 筆記練習→単語テスト→チャンク記憶→チャンク穴埋め→単語テスト→長文テスト
  • [day3] 筆記練習→長文テスト
  • [day4] 筆記練習→単語テスト→チャンク記憶→チャンク穴埋め→単語テスト
  • [day5] 筆記練習→単語テスト→チャンク記憶→チャンク穴埋め→単語テスト→長文テスト

ここで「長文テスト」に着目して全体を眺めると、実は1ユニットの中でも、1・2日目、3日目、4・5日目という3つの塊に分けることができ、全てこの「長文テスト」に向けて単語を覚えていくことになります。逆に言うと、「長文テスト」に出てくる単語やチャンクが、それまでの学習でそのまま出てくることになります。

問題1 この単語、まだ学習してないんですけど…

まず突っ込みたいのは1日目と4日目のチャンク。ここでのチャンクは先ほど言ったように長文テストに出てくる文がそのまま出てきます。ということはですよ、2・5日目に出てくるまだ知らない単語も含まれる可能性もあるわけで、実際、かなりの頻度であります。例えば、4日目のチャンクで、

detect the early symptoms

という文が出てくるところがあります。これ、「初期症状を発見する」って意味で、次の日の長文問題に出てくる文なのですが、この日学習する単語は"detect"だけです。"symptom"は次の日に学習するので、まだこの時点では意味が分かりません。それなのに、この文をスラスラと口を突いて出るまでに暗記しろって言うんです。嫌です。無理です。

問題2 3日目の構成が無茶しすぎ

間に挟まっている3日目は、単語の一覧が載っているだけで、次ページから即座に長文問題になります。んなアホな。しかも他の日の単語数は10〜12個なのに、3日目だけ3倍(^^;一応筆記練習するためのスペースがあるにはあるのですが、単語一覧にスペースを奪われているのでせまーい。要するに、本来2〜3日かけてやるべきところを1日に短縮してしまったワケです。「竹蓋Vメソッド」どころではありません。ただの暗記です。なんでこうなったかというと、alcの教材は基本的に週5日構成なので、それに無理矢理突っ込んできたのではと予想されます。

問題3 単語数が少ない

紹介文では3000語をカバーすると書いてあるのに、ざっと数えたら半分の1500語しかありませんでした。付録程度に付いているカタカナ英語(日本でもそのまま使われている英語)を含めたとしても2300語。どういうことなんでしょう?

問題4 なぜリスニング?

リスニングって必要でしょうか?この教材を選ぶ人は語彙を増やしたいのであって、リスニングを鍛えたいのではないと思うんです。あまりにも「CDを聴いて答えろ」って場面が多いので、だんだん何のためにこの教材選んだのか疑問を持つようになり、腹立たしく思えてきました。

問題5 復習が貧弱

紹介文によれば、学習した単語は1週間後、1カ月後に再登場して復習されるようになっているとのこと。確かに1週間後に復習されますよ。でもページの下に小さく単語の一覧が表示されていて、「一秒以内に意味が思い出せますか?」ってだけ。そしてページをめくったら答えが書いてあるだけ。それでは一ヶ月後の復習は…あったっけ?以前学習した単語が文中に出てくることはありましたが、ほとんど無いに等しいです。

問題6 暗記ばっかり

そもそも「竹蓋Vメソッド」って有効なのでしょうか?いえ、メソッド自体は有効だと思います。実際に竹蓋さんに大学で教わった生徒さんには効果が出ているのでしょう。でもALCさんの教材の作り方がまるでダメです。通常この手の教材を選ぶ理由としては、「暗記が嫌だから」というのが理由に挙がると思います。でもこの教材の中身って、ほとんど暗記です。一日の始まりは「単語の意味を覚えましょう」だし、次は「筆記練習しましょう」、そして「チャンクを暗記しましょう」です。ダルダルです。完璧に暗記したとしましょう。それでも示されている目安である30分では決して終わりません。60分〜90分はかかります。

終わりに

終わった感想としては、93%も定着している実感は全くありません。はっきり言って一人で学ぶ向きの教材ではなく、もう少し強制力のある場所(学校など)に最適の教材だと思います。学校であれば、「先生に当てられたときに答えられるように」とか、「テストで点数とれるように」とか、暗記に対する意欲が高いはずです。ですが社会人が家庭で学習するとなるとかなり意志が強くないと無理です。ALCさんにはもう少し「語彙を増やす」という目的に絞ってもらって、さらにページ数を増やして繰り返し学習を多くして、無理な暗記を無くす方向に行ってもらいたいと思います。

最後にこの教材を一言で表すならば…「高価な単語帳」。