『ファイナルファンタジーXIII』レビュー

ファイナルファンタジーXIII - PS3

ファイナルファンタジーXIII - PS3


とりあえずクリアしました。

クリスタリウムもレベル10が解放されたり、ミッションも全然やってなかったりで、まだ楽しみは残ってますが、とりあえず感想を書いてみます。

最初に断っておきますが私はFF13は好きです。面白いと思ってます。でもあえて言います。

マップ

今回、世論で一番の批判の的となったのでご存じの方も多いと思いますが、改めて言うと「一本道」です。ただひたすら前に進むだけで、戻るなんてのもありません。ストーリー上、主人公達は追われている立場なので戻れないという理由はあるにせよ、もう少し何とか出来なかったのかと思いました。グラフィックの関係で時間が掛かるのであれば、ロジック的な要素で一本道であるけど一本道に見えないということは出来たはずです。

一応、「神章」と言われている11章では広いマップが登場します。確かにそこに立った時は「おー!」「何だあのでかい敵ー」「更にでかいのいるのかよー」と思いましたが、いざ歩き回ってみるとそこまで広くなく、どこに何があるか結構すぐに覚えられる程度なんですねこれが。これの4倍くらいの大きさだったら、後々でも「凄かった」と言えたかも知れません。

それとRPGでは付きものの街での買い物ですが、これもありません。テクノロジーが非常に進んだ未来ですので、スタンドみたいなところですぐに転送されてきます。まあ主人公達がルシという、市民から忌み嫌われている存在ですので、店に行っても売ってくれないでしょうけどね。

ストーリー

これも「一本道」に次いでダメ出しされている部分でしょう。よく言われる2つがあって、一つは「感情移入できない」、もう一つが「わけが分からない」。

こうなる理由はズバリ、「説明が足りない」からではないでしょうか。恐らく制作においての時間的余裕、ディスク容量の関係から、全てをムービーにするのは無理で、かなりの部分を削らざるを得なかったと思われます。

ちなみに、ニコニコ動画のプレイムービーを見ると「訳わからん」というコメントを良く見かけますが、それもそのはずで、ムービーだけでは良く分からないのです。ところが実は実際にプレイした人だけの利点として、「オートクリップ」というメニューがあり、そこにはゲームを進めて行く上で必要な説明が追加されていくので、それを読んでる人は「ある程度」分かるようになっています。ムービー内で何故あのような言動をしたかという心境や、用語や施設などの説明、時には主人公達のその時の状況から「あの人物は今頃こういう行動をしているだろう」ということも説明されたりします。

ただ、「ある程度」と書いた通り、それらの文字情報があってもなお分からない部分があり、それらは想像するしかありません。想像させて印象に残らせるという手法も有りっちゃあ有りですが、今回の場合は想像させすぎ感があり、ムービーを見てもまず思い浮かぶのが「?」で、後からオートクリップを読んで理解しても後の祭り。ムービーを見たときに感動できなくては意味がないのです。もうちょっと文字情報やムービーを充実させるべきだと思いましたし、それが無理ならナレーションを多用しても良かったのではないかと思います。

グラフィック

これは言うこと無いです。さすがスクウェアです(あえてエニックスは付けない)。

特にプレイした人は感じると思うのですが、ディスクをロードする時間がホントに短い。この短さでよくあれだけのグラフィックを表現できるなと感心します。戦闘に入る時間もゼロです。

テレビの特集でやってたのですが、実際に声優の口の動きをキャプチャーして原型を作り、手作業で口の動きを調整しているのを見るとホントに頭が下がります。

戦闘

今作のメインです。このゲームは一にも二にも戦闘と言っても良いくらい。

コマンド入力方式の戦闘としては非常にサクサク進みますし、瞬時の判断が求められる形式で、個人的には非常に好きです。しかし、アクティブタイムバトルが駄目だという方もいますので、評価は非常に分かれるところではあります。しかも今作では、コマンドを選んでいる間は時間を止められる設定がありませんしね。

アクティブタイムバトル(ATB)

戦闘はアクティブタイムバトルです。戦闘が始まるとメーターがビューンと貯まっていきます。その間に各コマンドをセットしていく訳ですが、例えば「たたかう」や「ファイア」は1、「ファイラ」は2、「ファイガ」は3というように消費量が決まっていて、メーターがセットしたコマンドの総消費量に達したら行動を起こすという感じです。メーターの上限は決まってるので、例えばメーターの上限が5だったら、「たたかう」を5つ入れることも出来ますし、「たたかう」「ファイア」「ファイガ」と選択しても良いです。

オプティマ

各キャラクターには役割(ロール)を与えて戦闘します。アタッカーなら武器でガチャガチャ、ブラスターは魔法、ヒーラーは回復、みたいな感じで。各キャラクターは成れるロールが決まっていて(最終的には全てのキャラが全てのロールを習得できますが)、その組み合わせ(オプティマ)を戦闘中に次々と変えながら戦います。今作は、このオプティマ変更がカギを握っています。

ブレイク

オプティマと並んで大事なのが「ブレイク」というシステム。敵を連続で攻撃していくと「チェーンゲージ」が貯まっていき、ゲージが一杯まで貯まると「ブレイク状態」となり、ダメージ倍率がどんどん上がっていきます。中にはブレイク状態にしないと倒すのが難しい敵などがいたりするわけです。

リスタート

瞬時の判断がモノを言うだけあって、ザコ的でも死ぬことは普通にあります。それを見越してか、戦闘をリスタートさせる機能が非常に親切で良いです。戦闘で死亡するかリスタートすると、その戦闘に入る直前から再スタートできます。セーブしたところからではないので、何度でも挑戦し、試行錯誤して戦うことが出来ます。

オートコマンド

よく批判の中で、「○ボタン連打ゲー」という意見がありますが、ある意味あってますし、ある意味あってません。先ほど、戦闘の中でコマンドをセットする方法を述べましたが、実は毎回セットするのが面倒な時の為に、その時の状況を考えて自動でセットしてくれるコマンドがあるのです。よって、この自動セットコマンド「だけ」を使っている人にとっては「連打ゲー」となる訳です。まあ連打しなくても二回押せば良いだけなんですが、人間の心理として連打しちゃうんですね。

それに対して、上手く自動と手動を使い分けるのが賢いやりかた。自動も万能ではないので、例えば敵が固まっている時に広範囲魔法が自動的に選択されたはいいけど、発動する時には敵も移動していてバラバラになってた、結局は単体攻撃を多くやっておけば良かった、なんてのは良くある話です。

これも説明が…

ただ、これらの戦闘も説明不足の部分があります。例えば、ブラスターの攻撃はチェーンゲージがすぐに下がるけどアタッカーの攻撃ではすぐに下がらないとか、チェーンゲージの最高値は赤いゲージで記憶されていて、ゲージがゼロになる前に一度でも攻撃すれば最高値に戻るとか、同じ技を連続で使うよりも違うのを交互に使った方がゲージ上がりやすいとか、クエイク使った後にブレイクするとブレイク時間が最長になるとか。

これらの説明は雑誌に書かれてたことで、ハッキリ言って説明書に書くことですよねコレ。これもユーザーに研究させて話題作りの手段にしようとしたのでしょうか。

成長システム

今作の成長システムは「クリスタリウム」と命名されており、戦闘によって稼いだクリスタルポイント(CP)を使い、ロールごとに成長させていきます。大きなリング上にクリスタルが並んでいて、各クリスタルには「物理+5」とか「HP+50」とか書かれています。それらはラインで結ばれていて、CPを消費してライン上を移動し、クリスタル上を通過したら能力が上がるという感じです。リング上を一週したら次のリングへ移動でき、それが10段階まであります。

これだけの説明では単調に聞こえますが、実は2つの重要な要素があります。一つは「ロールレベル」で、リング上を進んで行くとロールレベルが上がるクリスタルがあり、最高でレベル5まで上げることができます。ロールレベルが上がると、戦闘中の他のメンバーにまで能力が波及し、たとえばアタッカーのロールレベルを上げると他の二人の攻撃力も上がり、ディフェンダーを上げると守備力が上がったりします。もう一つは「ラインの分岐」で、子供が書くような太陽を思い浮かべて欲しいのですが、メインのリングから外れた方向にも分岐したラインが引かれていて、そちらの末端には魔法などの重要なアビリティが位置しています。要するに、個人の成長を遅らせて全体の底上げを狙うか、個人を成長させて全体は二の次にするか、ここにも戦略が必要というわけです。

前作のFF12では、普通に進めていくだけで全てのキャラが全てのアビリティを覚えることができ、キャラクタの個性が無くなってしまうという失敗を犯し、後に能力に差を付けたバージョンをもう一本発売したという経緯がありましたが、今回はその反省は生かされているようです。キャラクター毎に固有のアビリティがありますし、攻撃力などにしても最終的には差が付くようになっています。

もう一つの成長要素が武器です。敵が落としたり宝として手に入れた素材を使い、合成していきます。が、これはどちらかと言うとコレクション要素が大きいかなと個人的には思います。気が向いたら成長させるという感じで、無理して成長させなくてもクリアできるので、クリア後のお楽しみ感が強いです。

まとめ

個人的には結構面白い作品でした。キャラも好きですし、これからもやり込みたいとも思います。ストーリーもアレでしたけど、最後はちょっと感動したりして(タイトルバックのロゴってああいう意味だったんですね)。

でも決して「成功した」とは言えません。

やはり全体的に思うのは、ストーリーにしても戦闘にしても説明が足りない、というのを強く感じます。セリフが臭くても、一本道でもいいですけど、せめてストーリーはハッキリさせてくださいよと。やっぱり制作期間が足りなかったんでしょうか。

体験版を前もって発売したのも失敗だったのではと思います。あの体験版で、一本道で戦闘がメインであることを深く印象づけてしまった。そこでいざ製品版をプレイして、色々なシステムがあったとしても、それは単に単調さを隠すための「付け足し」としか感じなくなってしまいます。

一つ希望があるとすれば、FF13にはまだ「ヴェルサス」と「アギト」という2つのタイトルが控えているということ。制作者の話によると、プリレンダとリアルタイムの映像を同じ品質にするために「踏み込んではいけないところに踏み込んでいる」そうで、もしそれができたら良い意味で恐ろしいことになりますよね。APIを使わないで直接ハードをいじったりしてるのでしょうか。しかもアクションRPGだそうです。今作とどういう絡みがあるのかも楽しみなところではあります。

ちなみに、ウィキペディアでヴェルサスのことを調べたら、「シリーズの中核に当たる作品」とのこと。あ、そうだったの?

追記

公式サイトにある鳥山求ディレクターのメッセージが気になる。「末永く、手元に残していただけると、さらにいいことがあるかもしれません」。ダウンロードコンテンツなのか、それともヴェルサスに何か引き継ぎ出来るのか、はたまた14に関係しているのか…何だろう。